リッジバンドとは？男の大事な性感帯なのか？ | メンズ形成外科 青山セレス&船橋中央クリニック

リッジバンド（ridge band）とは、包皮先端部の内外板移行部にあるヒダ状の粘膜構造であり、そこには感覚神経が密集しています。包皮小帯（いわゆる「裏筋」）と連続するこの領域は、解剖学者ジョン・R・テイラーらによって特徴づけられ、マイスナー小体（触覚に関与する神経終末）が特に豊富に存在すると報告されています。

このため、リッジバンドは男性にとって重要な性感帯になりうるとの主張があります。しかし一方で、米国の泌尿器科領域を中心に、この部位の性感帯としての意義については議論があり、肯定・否定両面の見解が示されています。

このブログ記事では、リッジバンドが性感帯として機能するか否かに関する支持的な立場と懐疑的な立場の双方について、医学的な研究知見に基づき整理します。

リッジバンドを性感帯とする肯定的な見解

リッジバンドの概念は1990年代にテイラー医師らによって提唱されました。テイラーらの解剖学的研究では、包皮先端内板の粘膜ヒダ（リッジバンド）は他の部位とは構造が異なり、微細な触覚受容器が集中していることが示されています。

実際、テイラーは「包皮先端のヒダ状粘膜帯は深いヒダ構造と豊富な血管を有し、マイスナー（性器）神経終末が特に密集している」と報告し、この部分が繊細な刺激を感知するのに適した組織であることを指摘しました。また彼は、このリッジバンドが陰茎の他の部位の皮膚や粘膜の動きに反応し、性感および反射的機能を果たすよう設計されていると推察しています。

例えば、リッジバンドへの伸展刺激が射精を誘発する反射に関与しうるとの予備的な報告もあり、射精時にみられる骨盤筋の収縮を引き起こす「反射誘発帯（reflexogenic zone）」である可能性が示唆されています。生理学的研究においても、リッジバンドが高い感受性をもつことが示唆されています。

サンフランシスコで行われたSorrellsらの研究（2007年）では、成人男性の陰茎の様々な部位の微細触覚閾値（Monofilamentによる圧覚閾値）を測定しました。その結果、包皮の外板から内板への移行部（いわゆるリッジバンド付近）が最も微細な触覚に敏感であることが判明しています。

具体的には、包皮のリッジバンドを含む領域（包皮内板）および裏筋周辺は、包皮非切除者（未包茎手術者）において陰茎で最も閾値が低く（感度が高く）、しかも包皮切除者における最も敏感な部位よりもさらに敏感でした。研究の結論として、「包皮の移行部は未手術陰茎で最も敏感な領域であり、包皮切除陰茎で最も敏感な領域よりも敏感である。つまり包皮切除は陰茎で最も敏感な部分を切除している」と述べられています。このように、リッジバンドを含む包皮末端部の組織は微細な刺激に対する感受性が高く、性的快感に寄与しうることが示されました。

支持派の専門家は、これらの知見からリッジバンドが男性の性感に特別な役割を果たすと考え、包皮のこの部分が性的刺激において重要な「特異的性感帯」であると主張しています。

参照元： cirp.org

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リッジバンドの意義に懐疑的・否定的な見解

一方で、米国の泌尿器科領域ではリッジバンドの特殊な性感帯としての意義に懐疑的な見解も多くみられます。筆者自身も以下の見解に同意します。

リッジバンドの存在自体やその重要性については議論の余地があり、主流の解剖学では明確に定義された構造とは認められていないとの指摘があります。実際、テイラーによる「リッジバンドが顕著な性感帯である」との主張に対して、後続の医学者の多くが異議を唱えています。

テイラーは自身の研究に基づき「包皮先端のリッジバンドがエロティックな（性的快感に関わる）感覚に極めて重要な構造である」と改めて強調しましたが、それに対し他の研究者（Payneら）はこの見解を退けています。

Payneはリッジバンドは性的感受性を高める特別な組織ではなく、包皮があることで物理的摩擦が変化する程度の意味合いしかないとの見解を示し、テイラーの主張を否定しています。また、「テイラーの所見は推測的であり、十分な科学的根拠に乏しい」と指摘しています。

さらに、近年の定量的な感覚研究や組織学的検討の結果も、リッジバンド（ひいては包皮）が特殊な性感帯かどうかについて慎重な見方を支持しています。カナダで行われたBossioらの最新の研究（2016年）は、包皮の有無による陰茎の触覚・痛覚・温度感受性の差を調べました。

その結果、包皮非切除者では包皮内板（リッジバンドを含む部分）が他の陰茎部位より微細な触覚にやや敏感であったものの、その差は前述のSorrellsらの主張ほど決定的ではなく、痛覚や温度覚を含めた総合的な感覚閾値には包皮内板の有無で大きな差が認められませんでした。

Bossioらは「本研究は*包皮が陰茎で最も敏感な部分である”とする過去の主張に疑問を投げかけるものだ」と結論づけ、包皮内板（リッジバンド）の存在が成人男性の性的な感覚機能に決定的な優位性を与えるわけではないと結論付けました。

総じて、この結果は「包皮内板＝最も敏感で重要な性感帯」という見解を否定し、リッジバンド（包皮内板）切除の性感帯への影響は極めて限定的である可能性を示しました。組織学的見地からも、リッジバンドに対する懐疑的なデータが報告されています。

2015年のCoxらによる陰茎の神経組織に関する最新の系統的レビューにおいても、性的快感に寄与する神経受容器は主に亀頭や陰茎体幹部（とくに亀頭冠や陰茎下面）に集中し、包皮自体はそうした特殊な受容器を多く含まないと結論付けられました。

具体的には、性刺激に反応する特殊な小体（例えばクラウゼ小体など）は亀頭冠や陰茎小帯近傍の深部に存在し、いわゆる「性感帯」と呼ばれる感覚はそれらの深部の受容器によって生み出されるとしています。

一方で、包皮内板に存在する感覚神経構造は手指など身体の他の無毛皮膚に見られる受容器と類似しており、その機能は主に触覚・温度・痛覚といった一般感覚に留まることが指摘されました。

包皮を剥くと、子供のころは亀頭が敏感過ぎた痛かったのが、成長につれて、いつの間にか痛みがなくなったことは多くの大人の男性が経験していることだと思いますが、興味深いことに、思春期に入ると包皮におけるマイスナー小体（細かな触覚を感じる圧受容器）の密度が低下することも観察されてました。性的活動が始まる時期にこうした圧受容器が減少する事実は、それらが成人の性的快感に中心的な役割を果たしていない可能性を示唆するものです。

さらに、このレビューでは「性反応に関与する神経構造は包皮の神経支配系とは異なる独自の経路を持つ」とも述べられ、包皮がなくとも性的刺激は主として他の部分で補われると論じられています。

総合的なエビデンスとして、質の高い研究の多くは「包皮の有無によって陰茎の感覚機能や性的満足度に有意な差はみられない」と結論付けており、「微細な触覚（マイスナー小体による感覚）は性的快感にとって決定的な要素ではない」との評価がなされています。

これは、仮に包皮内板（リッジバンド）が微細な触覚刺激を提供していたとしても、それが男性の性的興奮や満足に大きな影響を与えるわけではない、という立場を支持します。実際、数千人規模の男性を対象とした系統的レビューでも、包皮の有無による性的機能（勃起、射精障害、早漏など）や満足度に統計学的な差は認められなかったと報告されており、リッジバンド（包皮内板）が「失われれば性的快感が損なわれる不可欠の組織」とは言えないと結論付けております。

参照元： pmc.ncbi.nlm.nih.gov、en.wikipedia.org、pmc.ncbi.nlm.nih.gov

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