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新しい発毛薬とその効果とは?2-デオキシ-D-リボース(2dDR)について

更新日:2025/07/27

公開日:2025/08/01

男性型脱毛症(AGA)は年齢や遺伝の影響で進行する代表的な脱毛症で、世界の男性の約半数が影響を受けるとも言われます。これまでAGA治療として日本で承認を受けている薬は、外用薬のミノキシジル(血管拡張剤)と内服薬のフィナステリド(男性ホルモン抑制剤)の2種類のみです。しかし、ミノキシジルは降圧剤内服患者や循環器系の疾患を抱えている方の使用は注意が必要であり、フィナステリドは性欲減退や勃起機能への影響など副作用のリスクがあります。

このように現行治療薬には副作用の懸念があるため、「より安全で効果的な新しい発毛成分」の登場が長年望まれてきました。最近、その新候補として注目を集めているのが「2-デオキシ-D-リボース」という物質です。2024年に発表された研究により、この体内に存在する天然の糖(※デオキシリボースはDNAを構成する糖の一種)がマウスの実験で発毛を促進する効果を示したのです。

この発見は大きな話題となり、Yahoo!ニュース(Forbes JAPANの記事)でも「偶然の発見から脱毛症治療に新たな光明か」と紹介されました(2025年7月)。本記事では、美容皮膚科医でAGA治療を専門とする筆者が、2-デオキシ-D-リボース(略称: 2dDR)のメカニズムや海外の最新研究、既存の治療成分との比較、そして将来的な治療への応用可能性について、わかりやすく解説します。

参照元:Forbes JAPAN (Yahooニュース) 2025年7月23日

メカニズムの説明

   

2-デオキシ-D-リボース(2dDR)とは、文字通り「2位の酸素原子がないリボース」という構造を持つ糖で、ヒトを含む生体内でDNAの構成要素として存在しています。元々この物質は創傷治癒(傷の治り)を助ける作用が注目され、英国シェフィールド大学とパキスタンのCOMSATS大学の研究チームが約8年間にわたり研究してきました。興味深いことに、傷の治癒を促すため2dDRを塗布した部位では周囲より毛がよく生える現象が「偶然の発見」として観察されたのです。

研究者たちは「もしやAGAにも効果があるのではないか?」と考え、2dDRの発毛効果を本格的に検証し始めました。では、2dDRはどのように発毛を促すのでしょうか?キーワードは「血行(血液循環)」です。

髪の毛は毛根部(毛母細胞)が十分な栄養と酸素を供給されることで成長しますが、その供給源は頭皮下の毛細血管網です。AGAが進行した部位では毛包(毛根)がミニチュア化し血流も低下していることが知られています。2dDRにはこの血管を新生させる(血管新生といいます)作用があることが分かってきました。

実際、研究チームは以前の実験で2dDRが血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の産生を増やし、結果として新しい毛細血管の形成(血管新生)を促すことを報告しています。毛包周辺の血管網が増えれば毛根への栄養供給が改善し、毛が太く長く育ちやすくなります。「髪の毛の成長には血行が大事」と昔から言われますが、2dDRはまさに血流を増やすことで毛の成長サイクルを活性化する可能性があるのです。

研究者の一人であるシェフィールド大学のマクニール教授は、「私たちの研究は、髪の毛の治療には体内に元々存在するデオキシリボース糖を使って毛包への血液供給を増やしてあげればよいかもしれないことを示唆しています」とコメントしています。簡単に言えば、2dDRはミノキシジルと同様に頭皮の血行を良くし、休止期の毛包を再活性化して成長期へ移行させることで発毛を促すと考えられます。ただし正確な作用メカニズムは未解明であり、なぜ糖である2dDRがここまで血管新生や発毛サイクルに影響を与えるのか、今後の研究で解明が待たれます。

参照元: sheffield.ac.uk,frontiersin.org

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海外文献の紹介

2dDRの発毛効果が最初に明らかになったのは、2024年6月に科学誌「Frontiers in Pharmacology」に掲載されたマウス実験の研究です。英国・パキスタンの合同研究チームは、テストステロン投与によりAGA類似の脱毛状態を作り出したマウスを用意し、以下のグループで比較実験を行いました:

  • コントロール群:何も処置しないか、発毛成分を含まないハイドロゲルを塗布したマウス(脱毛は進行)(下記写真のNC)
  • テストステロン群:男性ホルモンのテストステロンを投与し、AGA状態を維持(T-1)
  • プラセボ群:薬用効果がない液体を塗布(T-2)
  • 2dDR群:2dDRを含むアルギン酸ゲルを塗布(T-3)
  • ミノキシジル群:市販の発毛剤有効成分ミノキシジルを塗布(T-4)
  • 併用群:2dDR含有ゲルとミノキシジルを両方塗布(T-5)

各群のマウスについて、毛が生え揃ってくる過程を20日間にわたり観察したところ、2dDRを塗ったマウスでは明らかに毛の再生が早まり、何も処置しない群や薬剤を含まないゲルを塗った群に比べて早期に毛が生え揃うことが確認されました。下の図は実験開始から経過日数ごとのマウス背中の様子を比較したものですが、2dDR処置群(T-3)は脱毛状態から太く長い毛が力強く再生しているのがわかります。

※実験経過中のマウス背部の発毛状況(T-3が2dDR群、T-4がミノキシジル群)。2dDR群では毛の伸びが良好で、毛幹一本一本が太く黒々としている様子が見られたと報告されています。

また、処置開始から21日後に各マウスの皮膚組織を顕微鏡で解析した結果でも、2dDRを塗布した群では毛包の長さ・太さ、毛密度(単位面積あたりの毛包数)、成長期(アナゲン)毛包の割合などが有意に増加していました。さらに毛包の毛母細胞に含まれるメラニン色素量や、毛包周囲の微小血管の数も増えていたとのことです。これらは毛の成長環境が改善されたことを示す指標で、2dDRが毛包を取り巻く微小環境を発毛に有利な方向へ変えたことを示唆しています。

肝心の発毛効果の程度ですが、研究チームは「2dDRの効果は既存薬のミノキシジルとほぼ同等(約80~90%程度)の発毛促進効果があった」と報告しています。実験ではミノキシジル単独群(T-4)も良好な発毛を示しましたが、2dDR単独群(T-3)もミノキシジルに匹敵する再生効果を示したのです。一方で、2dDRとミノキシジルを併用した群(T-5)では、単剤と比べて有意な上乗せ効果は見られませんでした。

これは作用メカニズムが類似しており片方で十分最大効果が出ていた可能性がありますが、いずれにせよ2dDRだけでミノキシジル並みの発毛が得られた意義は大きいでしょう。以上の結果について、研究チームは論文の結論で「AGAモデルマウスにおいて2dDRが発毛促進に有効であることが示された」と述べており、今後さらに研究を継続して「2dDRがなぜ発毛を促進するのか、その原因究明に取り組む予定」としています。この研究は世界中のメディアでも取り上げられ、「DNAを構成する天然の糖を使えば薄毛治療ができるかもしれない」として大きな期待と話題を呼びました。

一方で一部の専門家からは、「血流を増やすことと発毛との直接的な関連はまだ十分証明されておらず、人間での効果を見ないと過度な期待は禁物」といった慎重な意見も出されています。要するに、「マウスでは有望だが、すぐに人でも同じように効くとは限らない」という冷静な視点です。しかしながら、この研究が脱毛症治療の新しい方向性を示したことは間違いなく、世界中のAGAに悩む方々や臨床医から熱い視線が注がれています。

参照元:Stimulation of hair regrowth in an animal model of androgenic alopecia using 2-deoxy-D-ribose

治療への応用可能性

2dDRの将来的な治療応用には、多くの人が期待を寄せています。前述のマウス実験の結果は非常に有望でしたが、やはり人間に対する有効性と安全性を確認する臨床試験が不可欠です。研究チームも「本研究は初期段階だが更なる調査に値する有望な結果だ」と述べており、人での検証を視野に入れています。

現在、海外ではこの発見に着目した動きも始まっています。アメリカのスタートアップ企業2DDRヘルスケア社は、2024年8月に2dDRを配合した育毛セラムを開発・発売し、ボランティア顧客を対象に独自の調査を行いました。その結果「使用60~120日以内に92%のユーザーで抜け毛進行停止、54%で新生毛の増加を確認した」と報告し、現在より厳密な検証のため2025年中にインドで9か月間の臨床試験を計画中であるとしています。

もっとも同社も「最終的に我々はマウスではなく人間を相手にしている。2dDRがどのタイプの脱毛症に最も効果的か、慎重に見極める必要がある」と述べており、現時点では人でのエビデンスは収集中という段階です。それでも「少なくとも現時点で市場にある中では最も安全で効果的な育毛成分になり得る」との自信も示しており、副作用がほぼ無い天然由来成分であることは強調されています。仮に今後の臨床試験で安全かつ有効と確認されれば、2dDRは将来的にAGA治療の現場で重要な選択肢となるでしょう。

具体的には、外用の発毛剤(トニックやローション)として市販され、ミノキシジルが効かなかった人や副作用で使えなかった人にとって代替オプションになり得ます。あるいはミノキシジルやフィナステリドとの併用療法に組み込むことで、相乗効果や総合的な発毛効果の底上げが図れるかもしれません。2dDR自体は安価に製造可能で保存安定性も高い物質であり、さまざまなゲルや基剤に混ぜて使えるため実用化のハードルも低いと考えられます。

事実、前述の2DDRヘルスケア社の製品では2dDRに加え銅ペプチドや植物エキスなど複数の成分を組み合わせており、浸透性を高める工夫と合わせて「総合的に育毛にアプローチする処方」となっています。こうした製品開発のアプローチは、2dDRの効果を最大化しつつ実用レベルに乗せるうえで重要になるでしょう。さらに興味深い応用として、AGA以外の脱毛症や育毛分野への展開も考えられます。

研究チームは論文で「2dDRはAGAだけでなく、例えば化学療法後の脱毛など発毛刺激が望まれる他の状況にも役立つ可能性がある」と述べています。抗がん剤治療後に眉毛やまつ毛、頭髪が抜け落ちた患者さんの毛の再生を促す用途や、女性のびまん性脱毛症のケアにも応用できるかもしれません。従来こうした領域は有効な手立てが限られており、2dDRのような新しいアプローチは大きな福音となる可能性があります。

現時点(2025年)では、2dDRは研究段階の成分であり、日本国内で承認された治療薬は存在しません。入手も基本的にはできず、市販の商品も国内には未投入です。したがって、一般の方が2dDRを試すことはまだ難しい状況です。

しかし、海外での研究開発動向によっては数年内に製品化・実用化が現実味を帯びてくるかもしれません。その際には日本でも承認に向けた動きが出て、近い将来クリニックで提供されたり、市販薬として購入できる可能性もあるでしょう。

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まとめ

今回は、新たな発毛物質として注目される2-デオキシ-D-リボース(2dDR)について、メカニズムから最新研究、他の治療法との比較、そして将来の応用の可能性まで幅広く解説しました。

ポイントを振り返ると:

  • 2dDRは体内由来の天然の糖で、血管新生を促す作用により毛包への血流を増やし発毛サイクルを活性化すると考えられる。

  • マウス実験ではミノキシジルと同等レベルの発毛促進効果が確認され、副作用の少ない発毛剤の候補として期待が高まっている。

  • 現在使われているミノキシジルやフィナステリドと比べ、作用機序や安全性プロファイルが異なるため代替や併用が可能であり、特に副作用面で恩恵がある可能性がある。

  • 人での有効性はまだ検証段階だが、海外では臨床試験の計画や製品開発が進んでおり、数年以内にエビデンスが蓄積される見通し。

  • 将来的にAGAのみならず、抗がん剤後の脱毛や女性の脱毛症など幅広い毛髪再生ニーズに応える新しい治療法となる可能性がある。

以上のように、2dDRは「偶然の発見」から生まれた新発想の発毛アプローチであり、多くの可能性を秘めています。もちろん現時点ではマウスでの結果であり、これから人での安全性・有効性を慎重に見極めていく段階ですが、研究者たちも「結果は有望で更なる調査に値する」と述べています。AGAに悩む患者さんにとって、これは将来への大きな希望と言えるでしょう。

 

私自身、AGA治療の現場に携わる医師として、2dDRに関する最新動向には注目しています。「髪の毛の悩みを持つ多くの方に、新たな選択肢を提供できるかもしれない」という期待を胸に、今後も海外の文献や臨床試験結果をウォッチし、情報をアップデートしていきたいと思います。現状ではAGAは早めの対策と継続的な治療が大切です。

 

現在利用できる治療(ミノキシジルやフィナステリド、生活習慣の見直し等)を上手に組み合わせつつ、将来登場するかもしれない新しい発毛治療にもぜひご期待ください。薄毛に悩む読者の皆さまの一助になれば幸いです。今後も最新の情報が入り次第、このブログで解説していきます。

 

筆者:元神 賢太
青山セレスクリニック/船橋中央クリニック院長/医療法人社団セレス理事長。
1999年慶応義塾大学医学部卒。
外科専門医(日本外科学会認定)。
美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。
美容外科医師会理事。
美容外科医・包茎治療・ペニス治療として20年以上のキャリアがある。リパス、リパスGの命名者であり、日本の第一人者。
男性向けの性講座Youtube「元神チャンネル」は好評を博している。男性更年期障害(LOH症候群)と薄毛治療の改善をライフワークとしている。

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