形成外科・泌尿器科・性病科
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更新日:2025/09/27
公開日:2025/08/27

「賢者タイム」は射精直後に男性が経験する性的不応期(リフラクトリーペリオド)の俗称で、オルガスム後に一時的に性的興奮が消失し、追加の刺激に反応できなくなる期間を指します。この現象は人間だけでなく多くの哺乳類でみられ、射精後に性的活動が低下し勃起も一時的に困難になるのが特徴です。賢者タイムの生理学的意義として、頻回な射精を抑えて精液を補充し、生殖に必要な精子数を確保する負のフィードバック機構とする説もあります。
賢者タイムの発生に関与すると長らく考えられてきているのが「プロラクチン」です。プロラクチンは下垂体前葉から分泌されるホルモンで、本来は乳汁分泌促進などに関与しますが、男性を含む両性で数百もの生理作用を持つことが知られています。射精時にヒトやラットでプロラクチンが急激に放出されることが複数の研究で示されており、特にオルガスム依存的なプロラクチン急増が射精直後の性的鎮静(いわゆる「賢者タイム」)を引き起こす主要因ではないかと広く考えられています。
この記事では、賢者タイムにおけるプロラクチンの役割と射精前後のホルモン動態について、海外の最新医学論文やレビューをもとに詳しく解説します。射精直後のプロラクチン分泌メカニズム、射精後のプロラクチン・ドーパミン・テストステロンなどの時系列変化、年齢や個人差・性的頻度による違い、そしてプロラクチンを抑制・調整する介入(薬物・サプリメントなど)の研究知見について、専門医の視点から整理します。
参照元:nature.com

射精(オルガスム)に至るとき、脳内では報酬系を中心にドーパミンが大量放出され、いわば「快感のピーク」に達します。しかし射精の瞬間を境に神経内分泌の状態は劇的に変化し、ドーパミン神経系の活動は急激に低下します。これは薬物依存の離脱期に似た反応で、脳が過剰な興奮から平衡状態に戻ろうとするためと考えられています。
同時に下垂体前葉からプロラクチンが急峻に放出されます。生理的には、視床下部から放出されるドーパミン(別名「プロラクチン抑制因子」)が下垂体の乳腺刺激ホルモン分泌細胞(ラクトトローフ)上のD2受容体を刺激することで、プロラクチンの分泌は普段抑制されています。オルガスム後にはこのドーパミンからの抑制が解かれ、いわばブレーキが外れた状態でプロラクチンが血中に放出されるのです。
さらに射精の際にはセロトニン作動系や視床下部・下垂体からのオキシトシン放出も活性化するとされ、これらもプロラクチン分泌の増加に関与する可能性があります。実際、セロトニンを高める薬剤(例:SSRI抗うつ薬)は副作用として高プロラクチン血症と性機能低下を引き起こすことが知られています。このように射精直後には「ドーパミン↓・プロラクチン↑」というホルモン環境の反転が起こり、神経内分泌学的な「満足スイッチ」が入ると考えられます。
放出されたプロラクチンは全身に作用し、その効果の一つが性的興奮の抑制と鎮静効果です。プロラクチン受容体は人体の多くの組織に存在し、男性の場合は性機能関連組織(前立腺や精嚢など)にも発現しています。プロラクチンは陰茎海綿体などの受容体を介して勃起の消退(detumescence)を促す作用があることが示されています。
実際、プロラクチン投与によりラットで陰茎の弛緩が早まるとの報告もあります。さらにプロラクチンは血液脳関門を通過しにくいホルモンではありますが、脳の一部には血液脳関門の無い領域(脳室周囲器官)があり、そこを介して中枢神経系にも急速に到達します。射精後約2分以内という即時的なタイミングでプロラクチンが脳に届きうることが示されており、ゲノム作用を介さない迅速な神経反応を引き起こす仕組みもあると考えられています。
こうしたプロラクチンの中枢作用により、性的興奮に関わる神経回路(いわゆる「性欲をつかさどる脳内ネットワーク」)の活動が抑制され、強い満足感や倦怠感、睡眠欲求など賢者タイム特有の状態がもたらされると推測されています。つまりプロラクチンはドーパミンの分泌を抑えるブレーキ役として働き、一度オルガスムに達した後の「もう十分だ」という飽満感や性的飽和(サティエーション)の感覚に寄与しているのです。実際、射精直後に感じる満足感・多幸感にはプロラクチンの作用が関与していると考えられています。
以上のように、射精の瞬間にドーパミンの抑制が外れてプロラクチンが急上昇し、中枢・末梢両面から性的興奮を鎮めるメカニズムが存在します。この反応は「生殖行動の神経内分泌的な反射」とも言われ、プロラクチン急増が賢者タイム(射精後不応期)を確立する一因と考えられてきました。ただし、このメカニズムの重要性については後述するように異論もあり、他の要因との兼ね合いで議論されています。
参照元:sites.tufts.edu

プロラクチンは射精直後に顕著な上昇を示し、その濃度は平常時の数倍(例えば3~5倍程度)に達して少なくとも約1時間は高値が持続すると報告されています。このプロラクチン上昇はオルガスムに依存した反応であり、男女ともに観察されています(女性でもオーガズム後にプロラクチンが上昇)。興味深いことに、ある研究ではオルガスムから15分以内にプロラクチン値がピークとなり、その後も60分以上高値が続いたとされています。
さらに性交によるオルガスムではマスターベーション(自慰行為)によるオルガスムよりも一層高いプロラクチンの増加がみられ、「性的満足度の高さを反映している可能性がある」と報告されています。実際、性交後のプロラクチン上昇幅はマスターベーション後の約4倍にも達したとのデータもあります。以上から、射精に伴う急激なプロラクチン放出とその持続的高値は、人間における賢者タイムの生物学的指標の一つと考えられています。
一方、ドーパミンをはじめとする神経伝達物質の動態も射精前後で大きく変化します。性的興奮~射精に至る過程では脳内報酬系でドーパミン分泌が高まりますが、射精後にはドーパミン濃度が一過性に基準値以下まで低下する現象が報告されています。このドーパミン低下は先述のプロラクチン上昇と表裏の関係にあり、プロラクチン自身がドーパミン放出を抑制することで射精後の低ドーパミン状態を維持すると考えられます。
言い換えれば、射精後の高プロラクチン状態が脳内のドーパミン神経を抑制し、快感・やる気・性欲といった感情の高ぶりを鎮静化させるのです。このため賢者タイム中には「やる気が起きない」「もう十分だ」という心理状態や、刺激に対する反応鈍麻が生じます。また射精時には中枢からオキシトシンも放出されることが知られています。
オキシトシンは「絆ホルモン」とも呼ばれ、リラックスや親和感情を高める作用があり、射精後のリラックス・満足感に寄与します。オキシトシンもまた射精直後に顕著に増加し、特に男性では賢者タイム(不応期)の長さに関与するとの仮説があります(※実際にはオキシトシンが主因とする説とプロラクチン主因説があり議論中です)。さらに射精後には脳内でエンドルフィン(内因性オピオイド)が放出され痛みの閾値が上がることも報告されており、こうした複数の神経化学物質が組み合わさって「性的興奮→満足・鎮静」へのスムーズな移行を生み出していると考えられます。
テストステロン(男性ホルモン)の即時的な変化については、意外にも射精そのものによる急激な上下動は小さいとされています。健康成人男性を対象にした研究では、マスターベーションによるオルガスム前後でテストステロン濃度に有意な変動は認められませんでした。日常レベルでのマスターベーションや性交後にテストステロンが急降下するようなことはなく、あくまで射精後しばらくして通常の日内変動リズムに従い緩やかに変化すると考えられます。
実際、射精の有無に関係なく男性のテストステロン分泌は朝高く夜低い日内変動を示しますし、射精による即時のホルモン破綻は起こりません。以上をまとめると、射精後の急性期に顕著に変動するホルモンは主にプロラクチン(上昇)とドーパミン(低下)であり、テストステロンは急性期には大きな変動を示さないのです。
参照元:nature.com

賢者タイム(射精後不応期)の長さやホルモン反応には個人差が大きく、年齢や性生活のパターンによっても変動します。まず年齢の影響について、多くの男性は加齢とともに不応期が延長する傾向があります。若年男性では射精後数分~数十分で再度性欲が回復しうるのに対し、中高年になると数時間から場合によっては翌日以降まで次の勃起・射精が困難になるケースもあります。
生理学的には、加齢に伴いテストステロンなど性ホルモンの基礎分泌が低下すること、血管や神経の機能変化などが背景にあります。次に個人差について、男性の中には極めて不応期が短い、あるいは連続して複数回のオルガスムが可能な特殊例も報告されています。例えば一部の男性は射精後すぐに性的刺激への反応が回復し、短時間で連続して2回以上のオルガスムに達することができます。
このような「マルチオーガズム男性」の生理を調べた報告では、驚くべきことにオルガスム間隔が短い人では射精後にプロラクチンがほとんど上昇しないことが示唆されています。これは、不応期の生物学的長さには遺伝的・体質的な個体差が存在しうることを示しています。射精方法の違い(性交か自慰行為か)もまた、プロラクチン応答に差を生む可能性があります。
前述したように、パートナーとの性交渉によるオルガスムの方が、自慰行為によるオルガスムよりもプロラクチン上昇が顕著であったとの報告があります。このように性的刺激の内容や心理的充足度もホルモン反応に影響しうるため、結果的に不応期の長さにも影響を及ぼす可能性があります。さらにパートナーの新規性も重要な因子です。
動物研究で知られる「クーリッジ効果(新奇なメスの導入でオスの性的興奮が回復する現象)」はヒトでも類似の傾向があり、新たな性的パートナーが現れると男性の不応期が短縮されることがあります。この現象は進化的に、多様な交配機会を得るためにオスが配偶相手を替えると性欲が回復する戦略とも解釈されます。いずれにせよ、年齢・遺伝・体調・射精方法など様々な要因が絡み合って、射精後ホルモン反応と不応期の長さには人それぞれの違いが生じるのです。
参照元:nature.com

プロラクチンの分泌を抑制したり、その作用を調整することで性機能や不応期に影響を与えられるか?この問いに対する研究もいくつか行われています。代表的なのがドーパミン作動薬による介入です。ドーパミン作動薬は下垂体のD2受容体を刺激し、乳腺刺激ホルモン細胞からのプロラクチン放出を強力に抑制します。
臨床的にはドーパミン作動薬が高プロラクチン血症の治療に用いられ、上昇したプロラクチン値を正常化する効果があります。興味深いことに、健常者において一過性にプロラクチン値を下げた場合に性機能がどう変化するかを調べた実験があります。ドイツの研究グループが行った試験では、若年男性10名を対象にドーパミン作動薬でプロラクチン値を生理的低値まで下げ、その状態でポルノ視聴とマスターベーションによるオルガスムを体験してもらいました。
その結果、プロラクチンを下げた条件では性的興奮や快感、オルガスムの強度が有意に高まり、射精後不応期の満足度も増加したと報告されています。この結果は、急性のプロラクチン低下が男性の性的機能を高める要因となりうることを示唆しています。実際、高プロラクチン血症の是正治療では性欲やEDの改善が知られています。
ドーパミン作動薬でプロラクチン値を下げると、約90%以上の症例で性欲減退や勃起障害が改善したとの報告もあります。一方で、不応期そのものの短縮については明確な結論が出ていません。実験的にはマウスでドーパミン作動薬投与により射精後のプロラクチン放出を完全にブロックしても、不応期の長さ(再発射までの時間)に変化がなかったという報告もあります。
このため、「賢者タイムを劇的に短縮する魔法の薬」が存在するわけではなく、プロラクチン抑制も効果は限定的かもしれません。しかし、特定のケースでは有用性が示唆されています。例えば男性の射精障害(遅漏など)に対しカベルゴリンを用いた試みでは、約66%の患者でオルガスム機能の主観的改善がみられたとの報告があります。
この研究は131名の遅漏・射精障害の男性に週2回0.5mgのドーパミン作動薬投与を行った試験で、3分の2で射精感や快感の改善、残り3分の1で無効という結果でした。投与期間が長いほど改善率が高く、またテストステロン補充療法を併用していた群でも効果が高かったとされ、ドーパミン/プロラクチン経路を介した性機能改善の可能性が示されています。サプリメントや生活習慣によるプロラクチン調整の研究もいくつか見られます。
例えばハーブのムクナ豆はL-ドーパの含有量が高くドーパミン経路を賦活するとされる植物ですが、不妊症男性を対象にした試験でこの種子エキスを投与したところ、テストステロンやドーパミンが上昇し、プロラクチンが有意に低下したとの結果が報告されています。これはストレス等で高めに出ていたプロラクチン値が正常化したものと考えられ、間接的に生殖機能(精子数や運動率)の改善も認められました。最後に留意すべき点として、プロラクチンは生体に必要なホルモンでもあるということです。
プロラクチンには免疫調節や代謝調整など多彩な作用があり、生理的範囲で周期的に増減すること自体は正常な反応です。射精後の一過性のプロラクチン上昇はむしろ自然な生理現象であり、それによって得られる心地よい倦怠感や充足感は人間の性反応サイクルの一部です。賢者タイムは「体が休息を欲しているサイン」とも言え、無理にこれを抑制することが必ずしも望ましいわけではありません。
まとめ
このように、射精直後の「賢者タイム」におけるホルモン動態とプロラクチンの役割について、最新の医学論文を踏まえて概説しました。プロラクチンは射精時に急上昇し、ドーパミン抑制を介して性欲を急速に鎮静化する主要因と考えられますが、賢者タイムの長さや性機能回復には年齢・個体差・他のホルモン因子も影響し、プロラクチンだけですべてを説明することはできません。慢性的な高プロラクチン血症では性欲低下やEDが起こりえますが、適切な治療で改善可能であり、一方で正常範囲での一過性のプロラクチン変動は生理的な現象です。
賢者タイムはある種の「生理的ブレーキ」であり、性反応サイクルの自然な一部です。本稿で述べたように、その背後にはプロラクチンをはじめドーパミン、オキシトシン、テストステロン等の巧妙なホルモン変化が存在し、身体に一時の休息と満足をもたらしています。今後も研究の進展によって、この神経内分泌メカニズムの全貌がさらに解明され、必要に応じた介入法も洗練されていくことでしょう。
筆者:元神 賢太
青山セレスクリニック/船橋中央クリニック院長/医療法人社団セレス理事長。
1999年慶応義塾大学医学部卒。
外科専門医(日本外科学会認定)。
美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。
美容外科医師会理事。
美容外科医・包茎治療・ペニス治療として20年以上のキャリアがある。リパス、リパスGの命名者であり、日本の第一人者。テストステロンブースターサプリ「TB-1」の開発者。
男性向けの性講座Youtube「元神チャンネル」は好評を博している。また、男性更年期障害(LOH症候群)の改善をライフワークとしている。
テストステロン, 賢者タイム, プロラクチン, ドーパミン, 不応期
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